海の上に人間が創りあげた海上都市ベネチア。
世界有数の観光都市であるこの町で、毎年秋から冬にかけて高潮(アクア・アルタ)が発生します。
アクア・アルタ:「満潮」を示す言葉
イタリア語ではAcqua Altaと表記し、アクア・アルタ/アックアアルタなどとも呼ばれます。
アクアは「水」、アルタは「高い」という意味です。
今回の記事では、水の都「ベネチア」に訪れようと思っている旅行客がアクア・アルタに備えて注意すべき点、対策などについてまとめました。
【ベネチア旅行者は注意】アクア・アルタの時期と対策
ベネチアはイタリア半島の付け根、アドリア海に面した浅い海に人間が創りあげた海上都市。
中世の佇まいをそのまま残すベネチアは、町全体が美術品。世界遺産にも登録されています。
2019年11月に発生したアクア・アルタにより、町の85%以上が浸水しました。
サンマルコ寺院が洪水の被害に遭うのは、1,200年の歴史の中で6度目(ここ20年の間では4回目)とのことです。
画像引用:水の都で記録的高潮続く 被害額1200億円超か (2019年11月18日 Yahoo!ニュース)
こちらのニュース記事内の動画では、日本人観光客がインタビューで以下のように話しています。
「ずっと今日楽しみにしていたんですけど、思った所に行けないのがちょっと残念でした」
「ベネチアで色んな所を見て回りたい!」と思っている観光客が、予定どおりに動くことができず戸惑ってしまうのも当然だと思います。
何も知らずに行ったら大変なことになってしまった…という状況を避けるためにも、アクア・アルタに関する情報を知っておくと安心です。
旅行計画者は必見!アクア・アルタの時期
旅行客の方は、アクア・アルタがいつ頃くるものなのかを確認しておきましょう。
アクア・アルタは主に10月頃~3月頃に見られる現象です。
特に11月から12月にかけてがベネチアの洪水シーズンで、被害が深刻になることも多いと言われています。
アクア・アルタが起きる原因は、地球温暖化や地盤沈下があげられます。
なお、以下の3つの条件が重なることで、水量が増え洪水が発生します。
- 満潮
- 南風 (=シロッコ)
- 低気圧
ベネチアはアドリア海の北の端に位置しているため、シロッコが行き止まる場所にあたり、高潮が起きやすい地形なのです。
※季節風であるシロッコは、10月から3月頃にかけてアフリカから吹いてきます。
人間の力ではどうすることもできないものであり、避けるためには「旅行時期」に気を付けるというのも一つの手ですね。
アクア・アルタに現地で対策する方法
アクア・アルタの被害が一番多いのは、町のシンボル『サンマルコ広場』です。土地が低いため、潮の高さが80センチを超えるとあたりは水浸しになります。
ベネチアに行ってからアクア・アルタに見舞われた場合の対策として必須なのが長靴です。
ニュース映像を見ていると、多くの歩行者がビニールの長靴を履いているのがわかります。
(※動画:「水の都」ベネチア、高潮で水没 サンマルコ寺院も被害 – 朝日新聞社YouTubeチャンネルより)
ビニールの長靴は、靴の上から履けるという優れものです。サンマルコ広場入口付近の屋台や商店街のお土産屋さんなどで現地入手することも可能です。
アクア・アルタがくると、上の動画のとおり水上の渡し板を伝って移動できる場所もありますが、バシャバシャと歩かざるを得ない状況も発生します。
旅行者の中には「現地で買う前に濡れるのが嫌だ」とか「念のため日本から持って行きたい」という方もいます。
↑小さく折りたためて便利ということで、幅広い年代から支持を集めているのがこちらのレインブーツ。
色やサイズを選択できます。
アクア・アルタのシーズンにベネチア行きが決まっている場合は、折りたためる長靴を持っていけば安心ですね。
アクア・アルタの被害が少ないホテル選び
アクア・アルタの被害が少ない地域でホテルを選ぶのなら【サンタルチア駅付近】が良いと言われています。
洪水が深刻になりがちなサンマルコ広場と比べて高い土地にあるため、水没してしまう可能性は低いようです。
(2019年11月に発生した)アクア・アルタの影響で、現地ベネチアから「うちのホテルは営業できないから旅行客のキャンセル手続きをしてほしい」との連絡が入っているホテルもある。
ただ、サンタルチア駅付近は高潮の影響がそれほどないので、営業中止しているホテルは今のところない。
(2019年11月時点の情報)
こういうお話でした。もちろん、旅行時期や高潮の状況によっても異なるため一概には言えませんが、不安な方はサンタルチア駅付近のホテルを取られると良いかもしれません。
サンタルチア駅は交通の便が良い!
ヴェネチア観光における玄関口とも言われ、イタリアの各都市から鉄道が乗り入れています。
なお、サンタルチア駅からサンマルコ広場までは歩いて30分ほどの距離です。
沈みゆくベネチアを守る計画とは
大型のアクア・アルタ(110cmを超えるもの)は、100年前にはわずか数回しかでした。しかしその後に急増し、最近10年では50回以上起きています。
地球温暖化による海面の上昇と地盤沈下により、ベネチア本島はこの100年で20cm以上も沈んだといいます。
そこでイタリア政府が考えたのは、旧約聖書の英雄の名前から取った『モーゼ計画』。
モーゼ計画
アドリア海とラグーンを結ぶ水路の下から立ち上がって海をせき止める可動堰(かどうぜき)の建設。
モーゼ計画は2003年に建設を開始し、8年後の完成を目指していた。
ベネチアを水没から救う一手として期待されていたモーゼ計画ですが、2011年完成の計画からは大幅に遅れています。
大規模な浸水被害を防ぐはずの計画ですが、開始から数十年が経過して数十億ドルの予算が超過したにもかかわらず、完成にはまだ何年もかかる見通しだといいます。
楽しいイタリア旅行にするために十分な対策を
アクア・アルタは気候によるものですから、❝運❞の要素が強いです。
イタリアの名物・風物詩などとも言われ、「見られて良かった」とポジティブな反応をする旅行客もいます。
一方で、予期せぬ事態に戸惑う人も多いため10月~3月のシーズンに行く人は特に、対策を考えておいた方が安心だと思います。
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