『アイ・アム・サム / I am Sam』は、知的障がいを持つ父と小学生の娘の絆を描いた物語で、2001年の公開以来、多くの人から愛されてきました。
ビートルズの楽曲がたくさん使われているので、公開当時はビートルズファンの間でも話題になりましたね。
この記事では、映画のあらすじや作中で使われる英語についてお話ししていきます。
『アイ・アム・サム / I am Sam』のあらすじ
知的障がいがあり7歳児と同等の知能しか持たない主人公の男性・サムは、ビートルズが大好きで、産まれた娘に「ルーシー」と名付けます。
・ルーシーの名前の由来
ビートルズの曲:Lucy In The Sky With Diamonds
ルーシーの母親は出産直後に姿をくらませてしまったため、サムが幼いルーシーを1人で育てることに。周囲の友人らに助けられながら、父と娘は愛に満ちた幸せな生活を送っていました。
ルーシーが7歳になる頃に、ソーシャルワーカーから養育能力がないと指摘されたサム。最愛の娘であるルーシーと引き離され、幸福な日々を奪われてしまったサムは失意にくれます。
そして彼は、娘のルーシーを取り戻すべく法廷で闘う決意を固め、負けず嫌いなエリート弁護士のリタに依頼します。
『アイ・アム・サム / I am Sam』の英語
この映画で話される英語はテンポが一定ではないという特徴があります。
登場人物の話し方には多様性があり、そこも英語を学ぶ上で勉強になるポイントです。
- サム(SAM):非常にゆっくりと言葉を絞りだすように話す。
- ルーシー(LUCY):小学生と思えないくらい賢い話し方をする。発音もキレイで聞き取りやすい。
- リタ(RITA):弁護士なので知的で丁寧・正確な言葉を使う。かなり早口で聞き取りの難易度が上がる。
主にこの3名のセリフの中から、印象的なものをピックアップしたので紹介します!
それでは、ストーリーの一部を『アイ・アム・サム』の英語とともに見ていきましょう。
公園でルーシーとサムが一つのブランコに乗っているシーン
LUCY: Daddy, are ladybugs only girls, or are there boys, too? And if there are, what are they called?
「パパ、てんとう虫ってメスだけなの?オスもいるの?もしいるのなら、オスはなんていうの?」
SAM: Yeah, the Beatles.
「ああ。ビートルズだよ。」
ルーシーはladybugは「レディーの虫」だからメスしかいないと考えたんですね。
オスはいるの?という質問に対し、サムは「カブトムシ(beetles)」と答えようとしたのですが、❝the❞をつけたため自分が大好きな音楽グループ「ザ・ビートルズ(the Beatles)」になっちゃったんですね。
引き離されてしまったサムとルーシーが久しぶりに会うシーン
SAM: You’ve … you’ve grown.
「きみは…大きくなったね。」
LUCY: Have I ?
「そう?」
SAM: Yeah. Because your ears are bigger and your eyes are older. Oh, because … guess what I’m gonna get when I … I get my next paycheck? I’m gonna get an answering machine, because then you can call and leave a message. You can say, you can say, ❝Hi. This is Lucy.❞
「ああ。だって耳も大きくなってるし、目も大人になってる。ああ、そういえば…今度給料をもらったら何を買うかわかる?留守番電話を買うんだよ。だって、そしたらルーシーが電話して伝言を残すことができるだろう。❝ハイ!私、ルーシー❞って言える。」
サムからルーシーへの精一杯の愛情が伝わるシーンでした。
パパとの久しぶりの再会に嬉しさを隠せないのはルーシーも同じで、次のセリフは心に響くものでした。
(外で聞いているであろうソーシャルワーカーに聞こえるような大きな声で)
LUCY: I wouldn’t want any daddy but you. Did you hear that? I said I was sorry! I said I didn’t want any daddy but him.
「パパじゃないんだったらわたしはどんなパパもいらないの。今の聞こえた?ごめんなさいって言ったわよ!このパパじゃなかったらわたしはパパなんていらないって言ったのよ。」
サムの知能ではルーシーを育てられないという理由で引き離されてしまった二人。
立派に成長した娘からこんな風に言ってもらえるサムは、決して間違った子育てはしていなかったのだと思います。
娘を取り返すために弁護士が必要なサムがリタの事務所を訪れるシーン
RITA: Yes. That’s why I told you I would be your lawyer pro bono.
「そうよ。だからプロボノ(無料奉仕)としてあなたの弁護士になるって言ったのよ。」
SAM: I … I don’t understand exactly what you mean. You told me that you would be my lawyer?
「ぼ…ぼく、あなたの言うことよくわからないよ。ぼくの弁護士になってくれるって言ったの?」
『プロボノ』とは、各分野の専門家が、職業上持っている知識やスキルを無償提供して社会貢献するボランティア活動全般のことを言います。
実はリタ、同僚の前で自分にも寛大さがあることをアピールする狙いで「私だってプロボノぐらいやるわよ」という流れになっただけで、最初はサムの件に乗り気ではありませんでした。
ターナー検事がルーシーの本音を引き出そうとするシーン
MR. TURNER: Isn’t it true that deep down inside, very deep inside, you know you need much more than your daddy can give you?
「心の奥深くで、とても奥深くで、パパがくれるものだけでは足りないということがわかっているんじゃないのかな?」
LUCY: All you need is love.
「愛こそすべてよ。」
検事の意地悪な質問にもぶれないルーシーの言葉から、父親であるサムとの絆がストレートに伝わりますね。
ちなみに、この❝All you need is love❞はビートルズの大ヒット曲から取ってます。
旦那と上手くいっておらず悩むリタにサムが言葉をかけるシーン
SAM: You still need to leave your husband.
「やっぱりきみは旦那さんと別れなくちゃいけないよ。」
RITA: Oh, my marriage isn’t so bad.
「あら、でも私の結婚生活も悪くないわよ。」
SAM: Yeah.
「そう。」
RITA: It’s just that uh … it’s just … I’ve never lost at anything.
「ただちょっと…ただ…今まで失敗したことなんてなかったから。」
旦那が別の女と浮気していることを知って傷ついているリタを心から心配しているからこそ離婚をすすめるサム。一方で、これまでの人生ですべて「成功」してきたという自負があるリタは、離婚することは結婚の「失敗」を認めることになるのでなかなか踏み切れずにいます。
映画の終盤でリタとサムが話し合うシーン
RITA: Sam, I worry. I worry sometimes.
「サム、悪いわ。私はときどき不安になるの。」
SAM: Yeah. Do you worry that you did something wrong?
「ああ。何か悪いことをしたの?」
RITA: No. I worry that I’ve gotten more out of this relationship than you.
「いいえ。私の方があなたに救われていると思うの。」
この❝worry❞はぴったりとした日本語に訳すのが難しいですが、このセリフを発するときのリタの優しい表情を見ると、サムに感謝を伝えようとしているのがわかります。
リタとサムは、本来は弁護士と依頼人という関係なので「得る(I’ve gotten)」のはサムの方であるはずなのに、リタの方がサムから学ぶことが多かったと言いたいんですね。
この名作映画から学べること
この物語は、「親子の愛や絆」といったハートフルな要素だけじゃなくて、サムが抱える障がいも大きなテーマとなっています。
私自身がこの映画で特に印象に残っているのは、サムが周囲に与える良い影響の部分です。
上に載せたリタの最後のセリフにもあるように、気が強く負け知らずなリタが「救われている」と伝えたくなるくらい、サムは人を温かく包み込む力を持っているんだなと。
英語学習者の方にも、この映画はオススメです。
法廷のシーンの英語は難易度が高いですが、ルーシーを中心とした会話は日常的なもので、易しく聞き取りやすいと思います。
以上、何度も観たくなる名作映画『アイ・アム・サム』のお話でした!